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切り抜き詳細

発行日時
2012-10-9 6:00
見出し
第38回 東日本での出会いと再会(2)
リンクURL
http://www.presstokei.co.jp/?p=14358 第38回 東日本での出会いと再会(2)への外部リンク
記事詳細

琢磨
「次に行ったのは福島県や。ここでも二ヵ所行きたいところがあってな、一つは相馬市の海岸や。去年、無惨な姿に衝撃を受けたところで、今年はどうなっているか確かめたかったんや」


「村が流された所ですね。どうでした?」

琢磨
「瓦礫が整理されていただけで、堤防は壊れたまま。村があったところもそのままになってた。トラックが頻繁に行き交っていたから、復興は進んでいるのやろが、被害が大きすぎて目に見えた変化はあまり感じられんかったな」


「相馬市は大船渡市と違って放射能のこともあるし、深刻ですね」

琢磨
「もう一ヵ所は、去年ボランティアで来たとき泊まった南相馬市の民宿や。経営してるご夫婦がとても親切で優しい方でな、再会するのを楽しみにしてたんや。

 去年は288号線が不通になっていて、立ち入り禁止区域になっていた。えらい遠回りしてこの民宿へ着いたんや。電話で丁寧に道案内してもろて、やっと着いたのが夜の11時や。奥さんの『疲れてるやろ、とにかく風呂へ入りなさい』の一言がとても嬉しくて今も忘れられんわ。

 今年は、ご夫婦の勧めで、南相馬市の小高(おだか)へも行ってみた。ここは双葉から20キロ圏内の所で、最近になってやっと立ち入りが解除になったところや。解除になっても、寝泊まりすることは許されてないねん。行って驚いた。瓦礫の整理はおろか、当時のままや。

 ヨットが田んぼに乗っかってた。家は壊れたままでブルーシートがかぶせてあったくらいや。人の気配が感じられない。日が暮れてくると、何となく心細くなってきて、すぐに帰ってきたわ」


「情けないですね」

琢磨
「夕食前に民宿のご主人が『マムシはいらんか?』と、けったいな事言わはってな。『疲れてるからマムシドリンクでも飲めということかいな』と、生返事をしているとな、ペットボトルの水の中で泳いでいる生きたマムシを持ってきはる。

 『これを持って帰れ』と言うねん。『水の中で泳がして汚物を出させた後、焼酎に漬けなさい』と。『そんなこと、あんたがやりなはれ』と言うたら、『1週間こうして泳がしてると愛着がわいてきてかわいそうで殺せん。毒蛇やから逃がすわけにもいかんし』って。優しい人やろ」


「それ、優しいですか?」

琢磨
「まぁ、待て。このご夫婦の優しさはこの後の話で分かると思うわ。今回はお二人のお世話で、この地区の老人会で落語を演ることになったんや」


「老人会?仮設やなくて?」

琢磨
「仮設にはいろんなボランティアが来る。でも、老人会には来ないそうな。そこで私が落語を演ることになったんや。50人くらい集まってくれたかな。老人会の会長さんも熱心に人を集めてくれはったしな。

 会の前にペットボトルのお茶が配られた。この民宿が差し入れてくれたんや。なかなか出来ることやないで。おまけに、私には一人では食べきれないほどの福島の桃を持たしてくれるし…夕食の時のお酒代は要らん言うてくれはるし。私が泊まりに行ってかえってえらい出費してはるで」


「私も行って泊まってみたいな」

琢磨
「来年は、お前も入れて仲間を募って団体で行くとしよかな」


「そら、よろしいな」

琢磨
「来年は焼酎にほどよく漬かったマムシももらえるかもしれんしな」


「被災地の復興のほかにマムシも気になってるんですね」

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せっさていたくま 筆者プロフィル

■切磋亭 琢磨(せっさていたくま)

本名・石崎 豊

落語家

1951年生まれ、三重県津市出身。静岡大学在学中に落語に出会い、小学校教員を早期退職して落語家に転身。“社会人落語家”と称して、高座出演や講演活動を展開。 1981年に自ら立ち上げた「寝床の会」で落語会を続けるほか、県内各地の図書館で「子ども寄席」を開く。地元商店街の若手グループと協力して寄席を企画するなど、地域の活性化にも力を入れている。趣味は、旅行。

http://www.za.ztv.ne.jp/sessatei/

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